わたしはデザインに「造形」と「編集」という二つの側面があると考えている。造形とは文字のサイズや、色、写真を使うならどのように扱うのかを考えるのだが、その文字のサイズを裏付けるのはデザイナーの主観ではなく、編集である。
往時ひんぱんに例に挙がっていたのが、「日付を大きく」とか「目立つように赤で」などのクライアントの指示だ。デザイナーのプライドの話に持ち込むわけではなく、日付を大きくすることで造形がぴたりとはまることは多い。そのぴたりとはまる感覚が主観なのかもしれず事態は複雑なのだが、ここでは日付の大きさがイベントならイベントの文脈に乗ったのだと考えたい。造形の側面においても重要なヒントとなるその文脈は、デザインにおける編集の側面だと考えている。
いっぽう編集のみに目を向けて、造形がつまらなくては物にならない。話題となったイベントワクワク割も、ネーミングを造形、意味を編集に置換すると、決して他人事とは捉えられず、恐ろしさもある。造形と編集の往還によってデザインは生活に浸透する。